【薬剤師監修】FAGAとは?原因と治療方法をご紹介!
「最近薄毛が目立ってボリュームがでない、女性も薄毛になることってあるの?」
「分け目の頭皮見えが気になる」
このような疑問を持ったり症状に悩んだりしている場合、FAGAかもしれません。
FAGAは女性版のAGAですが、原因や治療方法がAGAとは大きく異なります。
本記事では、以下の点を解説します。
- FAGAとはなにか
- FAGAを引き起こすかもしれない5つの原因
- FAGAの治療法
最後まで読むことで、FAGAに関する科学的根拠に基づいた原因と治療方法がわかります。
また、「男性と同じ薬を使ってもいいか」「妊娠中はどうすればいいか」も解説しているので、ぜひ参考にしてください。
この記事の監修者
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北海道大学大学院卒業
薬局薬剤師としてAGAや壮年期脱毛症、円形脱毛症の医薬品調剤や服薬相談を多数経験
薄毛の悩みを解決できる医学薬学知識を啓蒙することで、患者さんのより良い人生に貢献したい
と思っております。
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FAGAとは
FAGA(Female AGA)とは「女性男性型脱毛症」のことで、女性の薄毛が進行する症状を指します。
FAGAは長らく「AGAと同じようなもの」と言われてきました。
しかし、近年の研究によって、原因や症状がAGAとは違うことが分かってきたのです。
したがって、「FAGAかもしれない」と感じても、AGAと同じ治療方法を試すのはおすすめしません。
以下ではAGAとの違いを詳しく説明します。
AGAとの違い
AGAとFAGAの違いは、症状の進行の仕方と原因です。
以下をご覧ください。
AGA | FAGA | |
症状の進行 | 頭部の一部分を中心にして薄毛が進行する | 毛が少しずつ細くなって、全体的に髪のボリュームが少なくなる |
原因 |
・DHT(ジヒドロテストステロン) |
詳しくわかっていない 考えられているのは以下のとおり ・ホルモンバランスの乱れ ・生活習慣の乱れ ・ストレス ・食生活の乱れ ・遺伝 |
AGAの原因は、DHTと呼ばれる男性ホルモンです。
5αリダクターゼという酵素が男性ホルモンをDHTに変えてしまうことで発症します。
20代や30代といった若い世代でも発症する可能性があり、主に頭頂部や前頭部など頭部の一部分を中心に薄毛になります。
一方、FAGAはAGAのように若い世代からじわじわと進行するのではなく、主に40代~50代の壮年期から起こる可能性がある症状です。
まれに若い世代でも発症することがありますが、「原因がFAGAである」とはっきりしないことが多いです。
その理由はAGAのように頭の一部分ではなく、髪が細くなっていき全体的に髪のボリュームが減っていくからです。
FAGAを発症する原因はわかっていません。
一般的に女性ホルモンであるエストロゲンが減少して発症すると言われていますが、科学的根拠はありません。
ストレスや生活習慣の乱れなども「関係がない」とは言えないため、若い世代でもFAGAを発症する可能性はゼロではないのです。
FAGAの原因
FAGAを発症する可能性がある原因は以下のとおりです。
- ホルモンバランスの乱れ
- 生活習慣の乱れ
- ストレス
- 食生活の乱れ
- 遺伝
2023年2月時点ではFAGAを発症するメカニズムは分かっていません。
それぞれの原因について詳しく解説します。
ホルモンバランスの乱れ
FAGAを発症する原因としてよく言われているのはホルモンバランスです。
上でも説明しましたが、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が減ることで、薄毛になってしまう恐れがあるのです。女性ホルモンは、髪の成長を促し、毛髪の退行や休止を減らす働きがあります。
女性ホルモンの一つである「エストロゲン」は卵巣から分泌されるもので、髪の毛を成長させるのに重要な役割を果たします。
エストロゲンが正常に分泌されていれば問題ありませんが、加齢や出産で分泌量が減ると相対的に男性ホルモンが増えてFAGAを発症する可能性があります。
生活習慣の乱れ
FAGAと直接関係があるかどうかはわかっていませんが、生活習慣の乱れも薄毛を進行させてしまいかねません。
睡眠不足になると、髪の毛の成長を促す成長ホルモンの分泌量が減ってしまうのです。
科学的なエビデンスは記載されていませんが、「睡眠不足はエストロゲンの低下を招く」といった情報もあります。
また、エストロゲンの分泌を低下させてしまう原因のひとつに、睡眠不足があります。
出典:PR TIMES
成長ホルモンは夜10時~深夜2時がもっとも多く分泌されると言われています。
その時間起き続けていると、分泌量が減り薄毛や抜け毛に繋がってしまいかねません。
睡眠不足は自律神経を乱れさせストレスの原因にもなるので、睡眠時間の確保をしましょう。
ストレス
ストレスとFAGAの関係はわかっていません。
ただ、ストレスは一時的な抜け毛増加につながる恐れがあります。
日ごろから慢性的なストレスを受けていると自律神経が乱れ、血行が悪くなってしまいます。
血行が悪くなると、頭皮に栄養が届きにくくなってしまうのです。
食生活の乱れ
食生活の乱れもFAGAとどう関係があるかわかっていません。
ただ、髪の毛の成長に必要な栄養が十分に摂れていないと、一時的な薄毛や抜け毛増加につながります。
特に不規則な生活や過度なダイエットを繰り返していると、頭皮の環境を維持するためや髪の毛を作るための栄養が不足してしまいます。
十分な栄養を摂取し頭皮の環境を整え、健康的な髪の成長を促しましょう。
遺伝
遺伝することがわかっているAGAと違いFAGAも遺伝するのかどうかはわかっていません。
しかし可能性は否定できません なぜなら
DHTと結びつくアンドロゲンレセプター遺伝子は、女性がもつX染色体を通して受け継がれる可能性があるからです。
しかし、女性の場合、男性ほどアンドロゲンレセプターを保有していません。
したがって、あったとしても影響するほどになるかどうかわからないため
FAGAが遺伝とどのようなつながりがあるかは不明なのです。
FAGAの治療方法
原因が明らかになっていないからこそ、治療方法も確立されていません。
ただ、次の方法を用いて治療することが多いです。
- 外用薬による治療
- 内服薬による治療
- メソセラピー
それぞれ解説します。
外用薬による治療
外用薬によってFAGAを治療する場合、もっとも推奨されているのがミノキシジルです。
ミノキシジルは国内で唯一発毛効果が認められています。
臨床試験データを紹介します。
次いで女性型脱毛症に関しては,1%,2%,および5%ミノキシジルを用いた 8 件のランダム化比較試験を解析した,1,242名の女性被験者を対象とした観察期間 24~32 週のシステマティック・レビューにおいて,ミノキシジルの有効性が明らかになった.
ミノキシジルの濃度は1〜5%ありますが、FAGAの治療に推奨されているのは「1%」です。
AGAの発毛剤は「5%」がメジャーなので、しっかりと濃度を確認してから使用しましょう。
内服薬による治療
内服薬による治療で、科学的根拠に基づき推奨されているものはありません。
AGAでは「フィナステリド」「デュタステリド」が推奨されていますが、どちらも男性用であり
男性ホルモンを抑える薬であるため女性は服用できません。
元々男性ホルモンの分泌量が少ない女性には
効果がないとわかっており、ガイドラインでも次のように解説しています。
他方,女性型脱毛症には内服療法を行うべきではない.
治療薬として認められてはいませんが、自由診療で処方してもらえる内服薬は2つあります。
- ミノキシジル
- パントガール
まず、ミノキシジルの内服ですが、高い発毛効果が期待できるのは事実です。
ただし、重篤な副作用を引き起こす危険性があります。
事実として、ガイドラインでは「推奨度D:行うべきではない」と定めています。
詳しく説明しますが、パントガールは女性の「びまん性脱毛症」に効果があるとされる内服薬です。
臨床結果で「改善した」という報告があるのは事実ですが、国内では実証されていません。
以上のことから、内服薬による治療はリスクが伴い安全が保障されていないためおすすめしません。
副作用が起きたときも救済制度や保険が使えないため、自己責任・自己負担になります。
メソセラピー
メソセラピーとは、ミノキシジルや成長因子を頭皮に直接注入する治療方法です。
投薬治療の場合は効果が実感できるまで最低でも半年から1年以上かかりますし、高血圧などの持病があると服用できない場合もあります。
メソセラピーはこのようなデメリットをカバーできる治療方法として活用されています。
弱くなった毛母細胞などを活性化させて、より早く高い発毛効果が期待できるのです。
ただし、ガイドラインでは推奨されていません。
内服薬と同じで、自己責任のもと治療を検討しましょう。
AGA治療薬は女性にも使える?
上述したとおり、男性用薄毛治療薬を女性に使うのはおすすめできません。
AGAとFAGAは原因が異なるからです。
繰り返しになりますが「フィナステリド」「デュタステリド」は、女性には効果がありません。
女性に対する適応はない。海外で実施した閉経後女性の男性型脱毛症を対象とした12ヵ月間のプラセボ対照二重盲検比較試験(n=137)において、フィナステリドの有効性は認められなかった1)
出典:プロペシア添付文書
次に、AGA用の「ミノキシジル発毛剤」は配合濃度5%のものが大半です。
上でも解説しましたが、FAGAで推奨されているのは最高濃度でも1%です。
かならず女性用に作られたミノキシジル発毛剤を使うようにしてください。
妊娠中でもFAGA治療は受けられる?
妊娠中でもFAGA治療を受けることはできます。
ただ、治療方法がかなり限られてしまうことに注意してください。
たとえば、FAGAの治療方法としてもっとも推奨されている「ミノキシジルの外用」もできません。
1%ミノキシジルの発毛剤を販売している「富士化学工業株式会社」のサイトでは、「次の人は使用しないでください。」という項目で以下のように記載されています。
- 妊婦又は妊娠していると思われる人、並びに授乳中の人。(妊娠中の使用については、十分確認されていません。また、ミノキシジルは母乳中に移行します。)
- 妊娠、出産に伴い脱毛している人。(壮年性脱毛症以外の脱毛症である可能性が高い。)
出典:富士化学工業株式会社
その他、内服薬やメソセラピーも推奨されていません。
FAGAの治療は授乳が終わり、医師から「問題ない」と判断されてからはじめましょう。
妊娠中〜授乳中は、薬物による治療ではなく、食生活の改善やストレスの発散にとどめておきましょう。
FAGAに関するよくある質問
まとめとして、FAGAに関するよくある質問に回答します。
ここで回答するのは以下の3つです。
- AGAとの違いは?
- FAGAの原因は?
- FAGAの治療方法は?
それぞれ解説します。
AGAとの違いは?
AGAとFAGAの違いは、症状の進行の仕方と原因です。
以下をご覧ください。
AGA | FAGA | |
症状の進行 | 頭部の一部分を中心にして薄毛が進行する | 毛が少しずつ細くなって、全体的に髪のボリュームが少なくなる |
原因 |
・DHT(ジヒドロテストステロン) |
詳しくわかっていない 考えられているのは以下のとおり ・ホルモンバランスの乱れ ・生活習慣の乱れ ・ストレス ・食生活の乱れ ・遺伝 |
FAGAの原因は?
FAGAを発症する可能性がある原因は以下のとおりです。
・ホルモンバランスの乱れ
・生活習慣の乱れ
・ストレス
・食生活の乱れ
・遺伝
上述したとおり、2023年2月時点ではFAGAを発症するメカニズムは分かっていません。
FAGAの治療方法は?
原因が明らかになっていないので、治療方法も確立されていません。
一般的に、次の方法を用いて治療することが多いです。
・外用薬による治療
・内服薬による治療
・メソセラピー
まとめ
FAGAについてまとめます。
- FAGAとは「女性男性型脱毛症」のことで、女性の薄毛が進行する症状
- AGAとは原因も症状の進行具合も異なる
- AGAと違って髪全体が細く弱々しくなっていく
- 女性ホルモンの「エストロゲン」が関係している かもしれない。
- FAGAの治療方法として推奨されているのは1%ミノキシジルの外用
今回解説したように、FAGAはAGAと治療方法が異なります。
「旦那の薬と共有する」といった考え方はやめておきましょう。
まずは医療機関を受診し、女性用の薬を処方してもらうのが大事です。